垣根






庭園の垣根



庭園は人間が土地をある区域から区切ることによって生まれ、その土地を区切るのに様々な材料を用いたのである。それはあるときは石であったり、土を塗り固めた土塀であったり、樹木で生け垣にしたり、竹を細工することによって出来た竹垣などである。ここでは特に竹垣に焦点を絞っていくつか代表的なものを紹介していくことにしよう。竹垣は庭園を創作した人と職人の優れた技術の結晶であり、デザイン的な美しさと共に、自然の素材特有の風合いが見事にマッチしており、庭園に独特な雰囲気醸し出すのである。特に都会において、ビルの中のちょっとした空間に竹垣を設置するだけで、自然と心が和むのは万人の認めるところである。





建仁寺垣建仁寺垣

京都の建仁寺にあるためにこの名前が付いたが、竹垣の中でも非常に代表的な垣根の一つである。江戸時代に入ってから流行し、その様子が当時の書物に書かれている。柱、胴縁竹、押縁竹に割竹を竪子として隙間なくくりつけた竹垣である。完全に遮断してしまいたいときや、ちょっとした目隠し等に広く使われている。代表的な寸法としては、割間が五区よりなり、したから五寸(約15cm)、一尺(約30cm)、一尺三寸(約39cm)、一尺三寸、五寸というような寸法で作られ、総高が四尺九寸(約148cm)で,上に一本の冠竹を用いるために、五尺(約152cm)の高さの垣となる。これが真の建仁寺垣という。

大徳寺垣大徳寺垣

京都大徳寺の境内にあったもので、現在はこの本歌は見られないが、古来用いられていたためにこの名前が起こったものと思われる。建仁寺垣と同様に囲み垣の一種で、竹の小枝を集め、これをよく左右にさばき、張り付け、さらに上から押縁竹で押さえ、シュロ縄で結んだもの。寸法は下から五寸(約15cm)、一尺三寸(約39cm)、六寸(約18cm)一尺三寸とし、その上を五寸くらいの空きとし、冠竹を挿入している。よく茶庭の中門付近や中潜り付近に用いられる。

桂垣桂垣

桂離宮の入り口の左側にある外周の竹垣で、これが本歌である。元々は桂川に臨む東側に残っている竹藪の竹を曲げて、自然のままの竹垣を作り、これを桂書きと称していたが、近年では非常に細かい細工を施した,左図のようなものを称して桂垣と呼んでいる。上の大徳寺垣と並んで,まさに日本の職人芸のすばらしさを示した竹垣といえよう。

大津垣大津垣

孟宗竹や真竹などを割って平たくしたものを,表と裏交互に網代風に組んだもので、名前の由来が、大津は京都の裏で京都は大津の表に当たることから、表と裏を組み合わせたところからきている。書院と茶席の間などに好んで用いられる竹垣である。

四つ目垣四つ目垣

建仁寺垣と同様に広く一般的に用いられる竹垣で、生垣に添わしたり,純然たる区切りとして用いたり、また茶の露地などでもよく使われている。特に茶の露地などでは、この四つ目垣によって二重露地にしたりするような使い方もある。名前の由来は竪子を取り付けるために四カ所の目ができることからこの名前が付いたといわれている。作り方としては,竪子は一般的には直径五〜六分(約2cm)の丸竹を節切りにしたものを用い、一本ずつ三寸(約9cm)、四寸(約12cm)、又は五寸(約15cm)というような間隔に取り付け、それを前後から一本ずつや、一本と二本を交互に取り付けたりというような具合に様々なバリエーションがある。これは四つ目垣といっても必ず胴縁が四本あるとは限らず、また竪子の丈も高さを不揃いにしたり、竪子自身も斜めに立てたり、交差させるような極端な崩し方もあるが、このような場合はやはり設計者の力量によって、上手にも下手にもなり得るのである。

金閣寺垣金閣寺垣

四つ目垣の変形種で、本歌は京都の鹿苑寺(通称"金閣寺")の竜門瀑より夕佳亭に至る石段や、夕佳亭付近に用いられている竹垣で,縦も横も丸竹を使い、冠竹を用いているところがおもしろい。やはり簡素ながら非常に趣のある竹垣である。

光悦垣光悦垣

京都の光悦寺にある竹垣で、本阿弥光悦が創作した露地の竹垣である。竹を細く割って丸く束ね、これを半月形に長く曲げ、その中に菱格子の竹を組んだもので、非常に上品な趣を持っている。

銀閣寺垣銀閣寺垣

この垣根は建仁寺垣の変形で、本歌は京都の慈照寺(通称"銀閣寺")の入り口付近に用いられているもので、高さが三尺(約91cm)内外に縮小したものである。横竹は二本だけで、上に冠竹を使用している。慈照寺では、この竹垣の下が石積みになっており、背後にアラカシやネズミモチなどを用いた生垣を構成し、石積みの上品な変化と、竹垣と生垣を巧みに合わせた使い方をしている。

鉄砲垣鉄砲垣

直径四寸(約12cm)あまりの丸竹を隙間無く一本一本並べ、一本は裏、一本は表というようにシュロ縄を用いて結んだものをいう。割間は、下から五寸(約15cm)、一尺(約30cm),一尺、一尺、一尺、一尺五寸という寸法で作られる。




写真による竹垣の使用例



創作垣
建仁寺垣を応用した私共の創作垣
設計(1995) 鰹d森完途庭園研究所


桂垣
桂離宮の桂垣


四つ目垣
隣地との境界線上に設けられた"四つ目垣"
設計(1994) 鰹d森完途庭園研究所



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