飛石






飛石について



今日一般的によく使われている飛石は、茶の湯の発展と共に露地で使われはじめた。だいたい桃山時代から盛んに使われはじめたのではないかと思われる。これは文献等を読んでいると千利休以前の露地には飛石がなかったようであり、江戸初期に書かれた「南方録」にも”休のもず野は、露地すべて芝生なりとかや、飛石なき事相応なり、当国抔砂地多石無きもよろし、苔地抔はせきだの裏しめりて悪し、飛石にすべし”とあるように、利休の堺の露地には飛石がなかったが、京都のように苔地の庭では、雪駄の裏がしめるので飛石の方がよいといっているのであり、飛石はそのようなところでこそ使うべきであると主張しているのである。このように飛石の歴史は、日本庭園の歴史の中でも比較的新しいものであるが、実用的であることはいうまでもなく、景としてみても非常に美しいものを持っており、今日露地以外でも多用されるようになったのである。しかし景と実用性をかねているからといって、一般の住宅の玄関アプローチに使うのは考え物である。なぜなら、日常的に使う場所であるからこそ、買い物の荷物の搬入や、ちょっと自転車を入れたりとかいう場合にもこれがかえって徒になってしまうのである。それと不意の車椅子の方の訪問などではにっちもさっちもいかなくなってしまうからである。飛石は手軽に使えるものであるからこそ、よく考えて使わなければならないのである。



直打ち直打ち

読んで字のごとく、石を真っ直ぐに打った飛石である。歩幅を考えて打ってあれば歩きやすいであろうが、変化が無く、良好な素材を使ったとしても面白味はない。

大曲大曲

これも直打ちと非常に似通った打ち方で、変化に乏しい打ち方である。

二連打二連

これは二つの真っ直ぐ打った石を左右に振り分けたりする飛石で、変化に富み、景としても、また歩いてみても非常におもしろい打ち方である。しかしあまりやりすぎるとかえってしつこくなってしまうので、兼ね合いが必要である。

三連打三連打

これも二連と同じような打ち方で、三つの石を使用する。この打ち方も二連やこの後の四連と同じように直打ちや千鳥の中に入れると非常に変化に富み、また見た目も大変美しくなる。

四連打四連打

二連、三連と同じと考えてよい。

二三連二三連打

今までの二連や三連などを巧みに混ぜ合わせたもので、効果的に方向転換したいときや、見た目の変化を付ける場合に効果的である。

三四連打三四連打

二三連打ちと同じ考え方でよい。

雁掛雁掛

ちょうど雁が大空を飛んでいるような形に打たれているためにこの名称がついた。

千鳥掛千鳥掛

一石ずつ右、左にと千鳥に打った飛石の名称。

七五三打七五三打

古来奇数は陽の数で、その中の三つをとって七五三とした。したがって祝儀に用いる数であるが、この考え方だけではなく美的感覚からも非常に美しい配置ができる数で、石組などに好んで用いられたが、飛石にも応用したのが、この七五三打ちである。特に大徳寺真珠庵は七五三の石組と、七五三の飛石は有名で、この絵はそれの写しである。

いかだ打いかだ打ち

書院式の茶庭の飛石を打つ場合によく用いられる手法で、日本の平行した板石が筏上に似ているためにこの呼び名がついた。


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