眠


 ある女性から

友人と二人であるツアーに参加していました。
どこかの観光地で説明を受けてるとき、友人が「ほら、あそこに
タレントのTがいる」と指差しました。
Tは私の一番好きな人。思わずじっと見つめてしまったけど、勇
気のない私は近寄ることもできず、隣にいる友人を気にして一人
さっさとツアーバスの方へ歩いていきました。
 
バスの周りには大勢の物売りがいて何か差し出すのです。よく見
ると、Tの顔が包み紙に印刷されたガムでした。私にしては珍し
く冷静に物の価値を判断し、買わずにバスへ乗り込みました。
そしてその紫色したガムを眺めほっとした気持ちになりました。 

場面が変わって、私たちは屋外の公開番組の収録に参加していま
した。中央に丸いプール(池ともとれるのに、なぜかプールと決
めていました)があり、それを三方から囲むように客席がしつら
えてあり、残り一面が舞台でした。

私と友人の二人だけがボックス席にいました。お客さんは結構入
ってて、自分たちの周りに誰もいないせいか、まさに高みの見物
状態でした。
と、そこへ司会者の二人が現れました。一人はなんとTです!
私は身を乗り出してしまいました。司会者のトークの間に、私は
いつのまにかボックス席に友人を残したままどんどん下、Tの近
くへと降りてゆく。
すると司会者の二人がゲームを始めると言いました。
二人それぞれ手首に錠のついたブレスレットをつけていて、鍵穴
にささっている鍵を誰かが抜き取り、遠くへ投げ、その鍵を司会
者自ら探しに客席へ入るといったものでした。そして鍵抜き取り
の大役に、Tが瞬時に私を指名してくれたのです。 

ところが嬉しさと緊張からか、私はもう一人の司会者の鍵を抜き
取った途端、下に落っことしてしまったのです。
鍵はすぐ近くの無人の客席の下に転がり、私が慌てて拾おうとす
るすぐ後ろで、Tが「姉ちゃん何してんの?OL?主婦?」と個
人的とも取れる質問をするので、私はますますぎこちなくなって
しまいました。

恥ずかしくて情けなくて、じっと下を見つめていると、不意にT
の腕が目の前に差し出されました。「今度こそちゃんと投げろよ
ー」と言うTの優しい口調にほっとして、細い手首にまかれた金
か銀のブレスレットから鍵を抜きました。
力を込めて投げようとすると「バックスクリーンの方へ投げろ」
とTからの指示。
見るとバックスクリーンは私のいたボックス席の上にあります。
置き去りにしてきた友人のことが頭にちらっと浮かんだけど、右
手に掴んだTの手首からぬいた鍵が何よりいとおしく感じて、T
への思いの分、遠くへ飛ばそうと、力いっぱい投げる瞬間、自分
の動作で、はっと目が覚めました。
 
果たして自分はその鍵を投げれたのだろうか...しばらくベッ
ドの上で考え込んでしまった夢でした。

  眠り男のコメント

  恋愛感情をあらわしているようですが、ブレスレッドと鍵は
  男性を象徴しています。ただ、タレントにそのイメージを置
  き換えているのは警告的な印象があります。
  特に好きなタレントであればあるほど、願望だけが空回りし
  ていきます。
  先のツアーバスは運命的な状況、次の公開番組はその状況を
  具体的に象徴しているようです。ある誰かに認められたい気
  持ちがいっそう強くなっているのだと思います。
  紫色のガムはあなたの嫉妬心、それから丸いプールの色はあ
  なたの現在の心境かもしれません。