1998/10/30更新


「庭園用語集」


庭園用語だけではなく、茶室や石造品に関係する用語なども含まれております。
代表的な語句だけを抽出して書いたので、専門家の方には物足りないでしょうが、このホームページ上での解説を理解するためには適度なものではないかと思っております。御意見、御要望等がございましたらE-MailYour Impresionにてお聞かせ下さい。今後、増補の際の参考とさせていただきます。



----------あ----------

合端(あいば) :
石積みを行うときや飛石を打つ際の、石と石とのなじみのことをいう。
青石(あおいし) :
正式名称は緑泥変岩という。庭園の景石や石積みなど、様々な用途に使用される。徳島県の阿波の青石、愛媛県の伊予の青石、和歌山県の紀州の青石が特に有名で、色の度合いも非常によく、特に有名である。関東地方では、埼玉県秩父地方から産出する石や、群馬県の三波石などがあるが、先の三県の物と比較すると青みが薄い。
揚簀戸(あげすど):
茶の露地に使われる中門の代わりになるもので、丸竹で組まれた枠に、割竹で編んだ網戸を上部に吊り、たけの竿などで上げ下げする戸のことをいう。
網代(あじろ):
杉の皮や壁板、割竹などを用い斜め菱形に編み合わせたものをいう。垣や枝折戸、障子の腰張り、天井などに用いられる。
東屋(あずまや) :
庭園の中に、眺望や小休憩のために作る侘び形式の簡易な建物のこと。屋根は四角、五角、六角、丸形などの四方葺きおろしで壁を用いずに作られたり、腰板のみの場合もある。
網干垣(あぼしがき):
茶庭や庭園の竹垣でその表面を人字型に、あたかも海岸で網を干すよう抽象化した模様の垣をいう。
編笠門(あみがさもん) :
茶の露地門の一種で、屋根の形が昔の編み笠に似ているところから、この名称がついた。大徳寺孤蓬庵方丈前の門がそうである。
安山岩(あんざんがん):
火山岩の一種で、造園用としては、延段や犬走りなどの乱張りに使用される鉄平石がよく知られている。

----------い-----------

生垣 (いけがき):
生きた樹木によって遮蔽する垣根のこと。
いけこみ形 :
燈籠の竿を地中に生け込む形式の燈籠のこと。
池庭(いけにわ):
水をたたえている池のある庭園をいう。池泉、林泉、園池、泉石、水閣も池庭をさす。
石畳(いしだたみ):
板石などによって作られた、延段の敷石道の名称。
石立僧(いしたてそう):
仁和寺系の僧侶で、作庭記の相伝に関連を持つ、作庭家としての僧侶。
石壺(いしつぼ):
いわつぼともいう。壺とは壺庭のことで、石を主にした場合を石壺という。
石燈籠(いしどうろう):
神仏に燈明をあげるために石で作られた燈籠のこと。三角、四角、六角、八角のものがあり,茶の露地に茶人が使うようになってから、次第に普通の庭にも用いられるようになった。
石橋(いしばし):
池庭又は枯山水の庭で、池や流れに架けられた石の橋。初期のものは自然石を使ったが、桃山期以降は切石も使われた。
井筒(いづつ):
井戸の地上部を、木または石で、円形や方形に囲ったもの。四枚の石で囲ったものや、一石をくりぬいたものもある。
伊予石(いよいし):
青石を参照せよ。
入母屋(いりもや):
建物の屋根の一種で、上部は切り妻で棟から両方に流れ、左右破風より下部は四方流れとなっているもの。
いろこ敷き :
正方形に加工した板石を、一つおきに向きを直角に変えて敷いたものをいう。南禅寺金地院にあるものが知られている。
磐座(いわくら):
神社祭祀初期のもので、自然石を神として信仰の対象とした。その信仰の対象となるものは,高山の巨石郡などで,これを磐座という。
石組(いわぐみ):
いしぐみとも言う。日本庭園で、石を組むことをいう。古くは石をたたむ、立石などと称した。そしてその位置、役目などにより、三尊石組、護岸石組などと呼ばれる。
石組園生八重垣伝(いわぐみそのうやえがきでん):
江戸時代に書かれた庭園書で、『都林泉名所図絵』を書いた秋里籠島の著。
磐境(いわさか):
あまついわさかというのが正しく、神のいる場所として、石を円形や列座させるなどして神聖な祭祀の座を作ったもの。神戸の保久良神社その他に多くの例がある。
陰陽石(いんようせき):
一家和合、子孫繁栄、豊作を祈るもので、男女の性器を象徴した石。正しくは「おんようせき」。[参照 : 陰陽道(おんみょうどう)]

----------う----------

鶯垣(うぐいすがき):
立子に樹枝を用い、割竹によって両面を押さえた竹垣のこと。樹枝にクロモジを使用すればクロモジ垣となる。
太秦形(うずまさがた):
京都市右京区太秦の広隆寺にある燈籠のこと。高さ7尺5寸、鎌倉時代の作。
打水(うちみず):
茶会などで露地に客が入る前に水を撒くことをいう。最近では玄関アプローチや、主庭に水を撒くときもなどにも「打水」という。
内露地(うちろじ):
茶庭のことを露地といい、その露地には外露地と内露地がある。中門や中潜より内側で、茶室に近いほうを内露地という。
梅ヶ枝の手水鉢(うめがえのちょうずばち):
古墳から出土した石棺の蓋を手水鉢として見立てたもではないかといわれている手水鉢のこと。 『梅ヶ枝』の名称は諸説色々あるが、その何れも定かではない。
鱗敷(うろこじき):
正方形に加工した板石を、角と角とを付き合わせて敷いた敷き石の名称。

----------え----------

瀛洲島(えいしゅうとう):
蓬莱神仙島の一つで、蓬莱、方丈、瀛洲、壷梁の四神島のことで、これらの四島の総称として、『蓬莱島』という。
遠山石(えんざんせき):
庭園内の立石の名称の一つで、築山の上部など、背後の遠景によく用いられる。
縁先手水鉢(えんさきちょうずばち):
手水鉢を据える形式の一つで、初期には桶や盥に水を入れて、縁先に出していたものが、やがて廂内の縁先に出されたことから、背の高い石造のものが用いられるようになった。また書院建築の発達と茶の湯との関係から、縁先に手水鉢を設置する必要がおこり、次第に発達していった。しかしながら現在は装飾用が主であり、実用に使われることが少なくなってきている。
遠州(えんしゅう):
小堀遠州(こぼりえんしゅう)を参照せよ。
円窓床(えんそうどこ):
床の正面中央の壁に、明かりとりと景のために輪郭の円い窓をあけたもの。壁の外には引障子、又は掛障子などを入れる。
園池(えんち):
苑池ともかく。平安期から鎌倉期の池のある庭のことをいう。
園方書(えんぽうしょ):
『山水並野形図』の別名。
苑路(えんろ):
園路とも書く。庭園や公園などに敷設された歩行、散歩用の通路のこと。現在では、身体障害者にとっても気軽に散策できるように、段差をなくしたり、傾斜角度も緩やかにするなど、健常人と共に活用できるように考慮、施工されている。

----------お----------

大霰(おおあられ):
石畳の一種。霰こぼしの一技法で、やや大きな玉石を、荒い目地に敷き詰めた手法をいう。
大刈込(おおかりこみ):
灌木類を寄せ、それらを刈り込むことにより蓬莱山や、築山を表現したりする方法で、刈り込み表現の非常に大きなもののことをいう。
落石(おとしいし):
茶室の躙口出入りの役石の一つで、躙口のすぐ外にある踏石の次に据える石のこと。因みに躙口のすぐ外の役石から、踏み石、落石、乗石の順番に据える。
下り蹲踞(おりつくばい):
蹲踞形式の一種で、古田織部が少し大振りの手水鉢を用いたときに、穴を深く掘っておろして用いたのが始まりといわれている。
織部燈籠(おりべどうろう):
茶人でもある古田織部好みの燈籠といわれている。竿を生けこんで用いる形式の燈籠で、現存する最古のものは、慶長20年の銘の入ったものがある。比較的小振りで全体のバランスもよく、蹲踞に添える燈籠として最もよく使われるものの一つである。
陰陽道(おんみょうどう):
陰陽五行説に基づく俗信。古代中国人の世界観で、この世の全てのものは陰と陽の二つからなり、その生成発展は木火土金水の五要素からなるという考え方。

----------か-----------

廻遊式(かいゆうしき):
鎌倉時代以降に盛んに作られた池庭の形式で、池のまわりなどを歩きながら鑑賞する形式で、江戸初期の池庭や現代の庭などにもこの形式がある。
反花(かえりばな):
石燈籠の基礎の周囲に刻まれた蓮弁のことで、下向きになっているものをいう。
額見石(がくみいし):
茶庭の飛石の一つで、客が席名などを見るためにために設けられた飛石の一つで、通常の飛石から一歩離れたところで、その席名を見るために最も適したところに設けるもの。別名物見石(ものみいし)ともいう。
掛樋(かけひ):
蹲踞や手水鉢に樋で水を引いてそそぎ入れる仕掛けで、水道の発達していなかった江戸期には、サイフォンの原理を利用したり、また豊富な水源のあるところでは、そのような場所から水を引いて、庭に風情を与えるようにしたものである。現在では水道が発達したために、大抵は水道から引いてきているのが普通である。
仮山(かさん):
日本庭園の古い呼称の一つ。鎌倉期から室町期にかけて盛んに使用された。
春日燈籠(かすがどうろう):
燈籠の代表的な形をさしていわれる。基本的には六角で、上から宝珠、笠(笠には蕨手がある)、火袋、中台、竿、基礎の各構成部品からなる。本歌はない。
刀掛(かたなかけ):
茶席の躙口の近くや待合いにに設けられた木枠で作った棚のこと。武士が席入りのとき帯刀をこの棚にかけて入席したもので、現在でも茶の精神やデザイン上での美しさなどから、当時の名残として新しい茶席にも作られている。
刀掛石(かたなかけいし):
茶室における、躙口の役石の一つ。躙口付近に設けられた刀を掛ける棚の下に据えられる石でる。なお二段石のような形式の刀掛石は、江戸中期以降に作られた茶室の刀を掛ける棚が低くなったために、その棚に合わせると石を低く据えなくてはならず、景観上見栄えをよくするために二段になった石を据えたのではないかと思われる。
桂垣(かつらがき):
桂離宮にあるもので、生きている竹藪の竹を曲げて作られたもの。現在一般的に桂垣というと、この手のものではなく、桂離宮入り口の左側にある外周の竹垣のことをさし、竹穂を使って編み込みながら作り、その上に先を尖らせた丸竹で押さえられて作られている。どちらにしても非常に手の込んだ竹垣であり、竹垣の中では最高の部類にはいる。
月輪(がつりん):
層塔の塔身、宝篋印塔の軸部、燈籠の火袋などに円形の輪を刻み、その中に梵字を彫り込んだりしたしている。それらの円を月輪という。
花頭窓(かとうまど):
禅宗建築の窓に多く用いられている。花頭とは蓮の花弁を図案化したもので、茶室では給仕口などにこれを模した形で作り、花頭口ともいう。
下腹雪隠(かふくせっちん):
茶庭の外露地についている便所のことで、実際に使えるもののことをいう。内露地内における砂雪隠は飾りのもので、この下腹雪隠とは違う。
亀島(かめじま):
蓬莱式庭園の池庭や枯山水の主要部に作る島のこと。亀頭石、両脚石、亀甲石などがあり、一石もしくは多数の石で組まれ、亀の形に作られている。
伽藍石(がらんせき):
寺社建築の柱の基礎に使われた石のこと。これを利用して飛石の踏み分け石に用いたり、水穴を開けて手水鉢に用いることもある。石造美術の観点からは、古い時代のもの、飛鳥、奈良時代のものなどがその建物の規模から非常に厚く大きなものが多く、時代が下がるにつれて、また建物の規模が小さくなるにつれて伽藍石自体の大きさも異なってくる。庭園の飛石に使われているものは、大抵がそれように作られたもので、人間が乗って歩くものであるためにそんなに厚いものはない。
刈込み(かりこみ):
庭園植裁の一手法で、樹木を丸い形や、四角などに形作る手入れのことをいう。海外ではトピアリーとよばれ、動物の形などに刈り込まれたりする。
火輪(かりん):
石造品における五輪塔の笠の部分にあたるもののことをいう。
枯池(かれいけ):
水を用いない庭の池のことで、ときに白砂や小石などを入れて、水のあるように扱った池のこと。庭を作った当初は水があったが、その後枯れてしまったものは「涸」の字を用いる。
枯山水(かれさんすい):
庭園の様式の一つで、世界最古の庭園書である作庭記にも出てくるが、平安期から室町期にかけて作られたものは、水に関係のない場所に作られた石組のことを称した。室町期以降は水を用いない独立した庭を称するときに使用される。現在では一般的に水の流れや池を白川砂などによって表現されたものを枯山水庭園と呼んでいる。日本庭園の手法の中では、最も作者の芸術性や技量を問われるもので、それだけに背景の思想性のはっきりしたものは、あらゆる人々を感動させられるものがある。
枯滝(かれたき):
水を使用せずに滝を表現したもので、池庭などにも使用されることがある。大体一般的に上記の枯山水庭園で表現されることが多い。
枯流(かれながれ):
水を使わないで流れを表現したもの。砂や石で表現されるのが一般的な手法である。これも枯山水庭園で表現するときに多く用いられる。
河原者(かわらもの):
過去の下層階級の蔑称で、作庭を含む土木労働に従事した者のことをいう。その中でも阿弥一族は、作庭だけにとどまらず様々な文化的な仕事に卓越した技能をほこり、文明八年に善阿弥が禁中において作庭工事に従事したことは画期的なことであった。これは善阿弥の作庭技術が傑出していた証でもある。
岩島(がんとう):
池庭や枯山水庭園における池の表現の中などで、石組だけによる島のことをいう。

----------き----------

亀頭石(きとうせき):
池庭や枯山水の亀島、亀石組に用いられる一石で、亀の頭の形を表現しているものをいう。
貴人口(きにんぐち):
茶席の客の出入り口の呼称で、元々は位の高い客の出入りのために設けたもの。一間二枚障子を入れるのが普通である。
亀尾石(きびせき):
鶴亀蓬莱の庭における、亀島石組の亀の尻尾にあたる部分の石のこと。<-->亀頭石
貴船石(きぶねいし):
京都貴船で産出する石。糸掛け、紫、よもぎ、虎石などの名称のものがあり、明治以来名石として珍重されている。
客石(きゃくせき):
茶の露地において、中門や中潜りの外側に据えた飛石の呼称で、門の内側に据えた主人石に対するもので、茶事の際、これらの石の上で主客が挨拶を交わす。
玉澗流庭園(ぎょくかんりゅうていえん):
桃山時代の作庭の流れの一つで、宋の高名な水墨山水画家の玉澗の描いた山水画を理想としたことからおこっている。背後に大きな築山を二つ、その間から瀧を落とし、その瀧の上に高く石橋を架けるのが、玉澗流の特徴である。しかしながらこの玉澗流の創始者ははっきりとしたことがわかっていない。
曲水式(きょくすいしき):
古く中国でもようされた曲水宴の故事により、優美な曲線を持って流れる水の状態を庭園に表したもので、この流れに盃を流して、その盃が到達するまでの間に和歌を詠んだりして、優雅な遊びにも使用された。
切石敷(きりいしじき):
切石を用いた園路や道のこと。矩形、短冊、亀甲、三角などがある。
金閣寺垣(きんかくじがき):
金閣寺夕佳亭付近に作られている、高さ1mの低い竹垣のこと。
銀閣寺垣(ぎんかくじがき):
銀閣寺入り口付近にある竹垣のこと。建仁寺垣を低くしたようなもので、高さは約1mほどのものである。
銀閣寺形(ぎんかくじがた):
銀閣寺東宮堂にある手水鉢のことで、方形で袈裟紋を思わせる格子状の模様がある。

----------く----------

空輪(くうりん):
五輪塔頂部の部分の名称。
崩れ積(くずれづみ):
石垣工法の一種で、崩れているような感じでいながら、綺麗に積まれた石垣の手法のこと。
九山八海(くせんんはっかい):
仏教用語で、仏教上の理想世界の中心として須弥山があり、その周囲を囲む九つの山と八つの海のことを指す。古くは池庭などでこれを抽象化して表現したり、また現代の枯山水の中でも、このことを背景として作庭されている例がある。
沓脱石(くつぬぎいし):
書院や茶席へ上がる際に、履き物を脱ぐために置かれた石のこと。自然石の場合、全く加工せずに靴を脱ぐ面が真っ平らなものや、全ての面に加工を施した加工品などがある。
鞍馬石(くらまいし):
京都鞍馬山系の土中から産出する花崗岩で、鉄分が多く、表面が赤茶色の錆色に覆われる。この鞍馬山からでるものが、天然の錆系の石としては最高のもので、これと同じような天然の錆が出る石に、京都丹波の丹波鞍馬(業界の人々は略してタンクラという)、山梨などで産出される甲州鞍馬などがある。主に飛石、沓脱石、また最近では殆ど施工されなくなってきているが、玄関アプローチなどでの石張りなどにも使われる。また最近DIY系のお店で売られているものは、鉄粉を塗って無理矢理錆色を付けたものであり、どこか不自然な色で、天然の錆色の風合いを知ってしまったら、使う気にはなれない代物である。
庫裏(くり):
寺院建築の中で、本堂や書院とは別に厨房のことをいう。主として住職が常駐するところのことをさす。
栗石(くりいし):
(1)小石のこと。主に茶席の軒内の畳石や、敷き石などに用いられたりする。(2)割栗石の略で、建築、土木関係の基礎部分の地固めように用いられる、大体において粒の揃った石を用い、砂利と玉石の中間ぐらいの大きさ。「ぐりいし」ともいう。

----------け----------

敬愛石(けいあいせき):
『山水並野形図』に示されている石のことで、丑寅の方向に他の石の影に見え隠れするような二石のことで、男女の語らいのように据える石のことをいう。
蹴込床(けこみどこ):
茶席の床の一種で、框を用いず、床板の面と畳の面とが面一になっている床のこと。別名踏ん床、踏込み床ともいわれている。
間知積(けんちづみ):
石垣工法の一種で、河川や住宅地の土留めなどによく用いられており、割石を用いて積んだ手法である。
賢庭(けんてい):
生没年不詳。小堀遠州が、自らの設計した庭園の作庭時に起用した庭師の名。
建仁寺垣(けんにんじがき):
京都の建仁寺にあるためにこの名前が付いたが、竹垣の中でも非常に代表的な垣根の一つである。江戸時代に入ってから流行し、その様子が当時の書物に書かれている。柱、胴縁竹、押縁竹に割竹を竪子として隙間なくくりつけた竹垣である。完全に遮断してしまいたいときや、ちょっとした目隠し等に広く使われている。代表的な寸法としては、割間が五区よりなり、したから五寸(約15cm)、一尺(約30cm)、一 尺三寸(約39cm)、一尺三寸、五寸というような寸法で作られ、総高が四尺九寸(約 148cm)で,上に一本の冠竹を用いるために、五尺(約152cm)の高さの垣となる。これが真の建仁寺垣という。

----------こ----------

光悦寺垣(こうえつじがき):
京都の光悦寺にある竹垣で、本阿弥光悦が創作した露地の竹垣である。竹を細く割って丸く束ね、これを半月形に長く曲げ、その中に菱格子の竹を組んだもので、非常に上品な趣を持っている。
格狭間(こうざま):
蓮弁を図案化したもので、燈籠、宝塔、宝篋印塔などの台座、須弥壇などに装飾として用いられている。
護岸(ごがん):
池泉庭園の汀の土留めや景を兼ねた石組のこと。この護岸の石組も時代的な手法や力強さなどの違いがよく見られ、おおよその時代別の判断材料になることもある。
苔庭(こけにわ):
庭の大部分が苔に覆われた庭園のことをさす。西芳寺や、大徳寺龍源院、円通寺などがよい例である。
腰掛待合(こしかけまちあい):
茶事を執り行うときに、露地入りした際の亭主の迎付けを待つ建物のこと。露地には外露地と内露地があり、元来外露地のものを待合、内露地のものを腰掛と称していたが、現在では腰掛待合の名称でいずれのものも呼ばれている。
小堀遠州:(こぼりえんしゅう)
小堀遠江の守政一。天正六年(1578)生まれ。小堀家の遠祖は藤原氏の支流で、左近将監光道という人が、近江国坂田郡の小堀を領したことから子孫が小堀を姓としたことからなる。江戸初期の大茶人であり、幕府の作事奉行として多忙な日々を送り、正保四年(1647)京都伏見において亡くなるまで、生涯、茶事、庭園、茶席の設計に関わっていた。茶事は、古田織部を師としたこと、また自らも大名であったということから、どことなく書院茶式の大名茶であったといえる。遠州と同じ江戸初期に活躍した茶人としては、片桐石洲、金森宗和、本阿弥光悦、千宗旦、藤村庸軒など、ずらりと蒼々たる名が連なる。遠州の代表的な作品としては、庭園においては、岡山県頼久寺庭園、南禅寺金地院庭園、仙道御所、大徳寺孤蓬庵庭園などがある。茶席としては、金地院にある八窓席は遠州の意匠であり、また孤蓬庵内の忘筌も有名である。
五輪塔(ごりんとう):
仏塔の一つで、下から「地」「水」「火」「風」「空」の五輪を備えるのでこの名称がついている。材質としては石造、水晶、金、銀、木像のものがあるが、石造のものは、特に笠、水輪(円形の部分)が茶の露地などの手水鉢などに使用されることがあり、鎌倉期や室町期のものが好んで使われる。大抵のものは水輪に梵字が彫られている。
呉呂太石(ごろたいし):
茶席の手水鉢の海、州浜敷き、延段などに使用される6〜12cmぐらいの丸い石で、大抵は花崗岩系のものが使われる。

----------さ----------

嵯峨流(さがりゅう):
日本庭園作庭流派のうちの一つで、嵯峨流と四条流の二派が非常に古い時代に二代流派として現れている。黒川同祐の『雍州府志』(貞亭年間,1684-1687)、『茶書全書』(元禄7年,1694)、『和漢三才図会』(正徳2年,1712)など、その他の書にも二派の名前が記されている。
作庭記(さくていき):
平安期に書かれた日本最古の造園書で、「前栽秘抄」(せんざいひしょう)ともいう。作庭に関する最高の指導書であるが、筆者は定かではない。
座禅石(ざぜんせき):
庭園の石組の一種で、上が平たい石(平天石)を用い、上座席ともいう。禅僧がこの石の上で座禅したという言い伝えからこの名称になった。
差石(さしいし):
茶室壁面の下、柱の下にある束石と束石の間に整えて並べられているゴロタ石のこと。
寂(さび):
古びて趣のあること。古色、蒼古といった感じで、侘びとともに茶道の理念を表している。庭にあてはめる場合は茶の露地に対して使われることが多い。
砂紋(さもん):
白砂などが敷いてあるところで、何本ものすじで複雑な模様が描かれているものをいう。白砂が敷かれているところは海や流れを表現したものであるから、波や水の流れを直接的に表現するのではなく、あくまでも抽象的に表現することによって、その庭に様々な表情を与えることができる。特に日没後、ライトアップなどで間接的な光を与えてやると、砂紋自体が非常にくっきりと浮かび上がり、明るいときとはまた違った表情を見せたりするので、作者の意図した意匠を、時間によって変化させることができる。しゃもんともいう。
沢渡り(さわわたり):
池中や流れを渡るために水中に石を配置するもので、枯山水の場合も同様の表現方法をとる。用と景を兼ねたもので、自然石や橋杭石などを用いる。
三尊石組(さんぞんいわぐみ):
庭園石組の中で、最も根幹をなす石組手法で、大小の三個の石を、三尊仏のように組んだものをいう。この三尊石組の手法をよく見ると、大凡の年代鑑別に役立つことがある。いわゆる石庭といわれる庭の場合、この三尊石組の連続した組み方で見せるのが石組の基本でもあるため、注意深く研究することが必要である。

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敷石(しきいし):
板石を主としてアプローチなどを舗装する方法で、一般的な形式では切石敷き(長方形の板石を並べていく方法)、寄せ石敷きなど種類が多く、また非常に自由な発想を持って敷くことができるので、デザイン的にも非常にユニークなものができ、最も広く使用される方法である。
四神相応(しじんそうおう):
中国の道教思想の一つで、東は青龍、西は白虎、南は朱雀、北は玄武の四神が各々の方角を守る神であり、これらの総称で四神相応という。
七五三式(しちごさんしき):
石組や、刈り込みなどで七、五、三に組み合わせた形式の庭のことをいう。代表的な石組における七五三形式の庭は、京都大徳寺真珠庵庭園、龍安寺庭園、また刈り込みの庭としては京都正伝寺庭園がある。
七五三の飛石(しちごさんのとびいし):
七、五、三に振り分けた飛石の打ち方のこと。大徳寺真珠庵庭園の飛石が代表的なもの。
七五三の庭(しちごさんのにわ):
古来から奇数は陽の数としておめでたいことであり、その中の三つの数字をとって七五三とし、これを祝儀の数としたのである。このように縁起のいい数であることから、作庭にあたってこの考え方が流入してくることは当然のことである。室町時代以後この手法は続いているが、祝儀的な要素だけではなく、これらの数からくるバランスの良さが、作庭条件として非常に優れていることも好まれる要因である。 龍安寺、大徳寺方丈庭園、同真珠庵庭園などは七五三の枯山水庭園として著名なも のである。また刈り込みによる七五三の庭園としては、京都正伝寺の庭園がある。
司馬温公形(しばおんこうがた):
司馬温公の故事によって命名された手水鉢のことで、京都等持院青漣亭前にあるものが本歌。
蛇籠(じゃかご):
割竹を編んでその中に玉石などを詰めて、水流の浸食などを防ぐために用いられたするが、流れなどの添景物としての要素のほうが大きい。
縮景式(しゅっけいしき):
日本庭園の様式の一つで、名所などの風景を縮小して取り入れ作庭すること。大名庭園に多く見られる。
借景(しゃっけい):
庭園の外の風景をその庭と同化させて取り込んでみせること。江戸期から盛んに取り入られるようになったが、それ以前の庭園は、そのようなものの力を借りなくとも見せることができるように作られていたが、結局のところ、創作意欲の低下とともにこのような手法が用いられるようになり、またそれが現在においても良しとされる風潮を生み出したのである。真摯に創造された庭園に借景は必要ない。
砂紋(しゃもん):
さもんを参照せよ。
舟遊式(しゅうゆうしき):
平安期を中心として発達した池泉庭園において、舟を浮かべて舟遊したことから舟遊式という。
守護石(しゅごせき):
その庭の石組の中で、起点となる重要性を持った石のこと。
須弥山(しゅみせん):
仏教宇宙観で、宇宙の中心をなす山のことをいう。サンスクリット語を音写して須弥山、それを意訳して妙高山ともいう。金輪の上にあり、水面から8万由旬の高さでそびえる。またこの須弥山の周りには九山八海が広がり、その周りを日月が巡り、さらにその周囲や上方にを六道諸天がある。そして頂上には帝釈天の宮殿がある。庭園ではこの思想を主として石組に取り入れ、石を中央に寄せて立てたり、また集団で石組をした中央に立石を用いたりして表現したりしている。このような石組を須弥山石組という。
正真木(しょうしんぼく):
江戸中期以降に流行した自然主義庭園の中で、その庭の中心となる木のことで、築山の上や中島など庭園の中心に松などを植えること。
浄土式庭園(じょうどしきていえん):
庭園型式の一つ。平安期に普及した、仏教の浄土思想を庭園内に表現したもの。そもそも浄土とは、煩悩から解き離れ、悟りの境地に這った仏様や菩薩の住む清らかな国土のことをいう。
白川砂(しらかわすな):
京都北白川付近から産出する花崗岩で、風化して砂となったもの。あるいは砂状に砕いたもののことをいう。砂状と入っても3〜15mm位までの大きさのものがあり、三分(1cm内外)のものが一番よく使われる。
地割(じわり):
庭園設計をなす根幹のもので、設計に従って池の形や島の配置、築山の設け方、石組の配置などのことをいい、これによって庭の時代識別やどの様な思想を持っているかが一目瞭然で知ることができる。
真行草(しんぎょうそう):
『山水秘伝書』の中に「真の山水の意也」と、真の文字を使って書かれており、また行の説明なども書かれている。草の説明が入った庭園書は、江戸時代に書かれた『築山庭造伝』に、真行草の文字が使われ、これ以後日本の庭園の世界に真行草が広まっていった。正形のものを真、形を崩したものを草、その中間のものを行という。江戸時代に庭の区別に用いられた。また飛石、四つ目垣、延段などにもあてはめたりしている。
心字池(しんじいけ):
平面上に心の文字を表した池庭のことをいう。鎌倉、室町期にできた庭を心字形ともいう。

----------す----------

捨石(すていし):
従来の石組とは違うもので、山間にさりげなくある石のように据える手法のこと。自然主義庭園が盛んになった江戸末期から明治期にかけて確立された手法である。しかし近年は石の材質や形ばかりにとらわれすぎて、本来の捨石としての役割から逸脱している例が多い。
砂雪隠(すなせっちん):
露地の一部に設置された特殊な便所のことで、内部には役石をおき、穴に砂を敷き詰め、常に綺麗に掃除されている。実際には殆ど使用されず、茶事の際に亭主が客に対して、便所までここまで綺麗に掃除してありますよ、ということを見せるためのもので、亭主の客に対しての心遣いを見せる場にもなっている。
砂盛(すなもり):
庭園内に砂を盛ること。これは貴人のお出迎えの際にまいたり、祭事の時に使われたりしたが、現在では庭の添景として扱われている。
州浜形(すはまがた):
曲線を伴った広い砂浜を庭園に意匠化したもので、池の汀の線に用いられる。また建物の縁側下部の軒内などにもこの曲線が使われることがある。

----------せ----------

井泉(せいせん):
庭園内の井戸や泉のこと。
関守石(せきもりいし):
ゴロタ石をシュロ縄などの飾り紐で十文字に結び、これを飛石上に置くことでこれより先の出入りを禁ずる役目を果たすもの。露地内における用と景の両面を併せ持つ。
関守竹(せきもりちく):
関守石と同じ意味合いを持つもので、先の出入りを禁ずる役目を果たす。
禅院式の庭(ぜんいんしきのにわ):
禅宗寺院に作られる庭の形式のことで、禅的な意図を表現した庭園のことをいう。
前苑(ぜんえん):
前庭、南庭、時には御前の壺などともよばれるが、普通は書院前の庭のことをいう。平安期以降南苑、南庭、南池などと混同して使われている。殿舎の前は白砂敷きとし、その前部に池などを作る。
前栽(せんざい):
平安期の頃に、寝殿の前庭として、植裁本位の庭が作られ、これを前栽とよんだ。後世では一般的に前栽というと庭全般のことをいう。
泉水(せんすい):
庭園の呼び名の一つで、主に池庭のことを指す。現在では一般の庭の呼称に用いられている。
剪定(せんてい):
樹木の枝葉を透かし整枝すること。各地方によって剪定の仕方は異なる。また整枝だけではなく花の付きや、樹木の活性化などの役目もあり、用と景の両面を併せ持つ役目を果たす。

----------そ----------

相阿弥(そうあみ):
同朋衆を参照せよ。
草庵(そうあん):
山間の侘びた建物のような風情の茶室のこと。書院茶の華美なものを嫌ったことに対して創案されたのが始まりといわれている。
添水(そうず):
京都詩仙堂の庭に見られるもので、流水を竹筒に導き、その作用で石の頭を叩き、竹筒の音によって獅子を追ったものをいう。獅子は猪などのこと。この施設の名を添水唐臼といい、略して添水といっている。
礎石(そせき):
木造寺社建築の柱の根本に据えられている石のこと。近年、飛石や手水鉢などで庭園に使用されるようになると、素朴ながらも力強い意匠であることや、実用を兼ねたものであることなどから、現在では最初から庭園資材用に作られている。そのために本来の建築用のものと比較すると、厚みが非常に薄い。
袖垣(そでがき):
建物の角から外方に突き出して付ける幅の短い垣根のことをいい、一部の遮蔽や部分的な区画の役割をする垣根のこと。建仁寺垣や大徳寺垣などの有名な竹垣の写しや、くろもじなどを使った創作のものまで、様々な意匠のものがある。
袖形燈籠(そでがたとうろう):
全体の形が袖のようなところからこの名称がついている。修学院離宮下の茶屋にあるものや、本派本願寺飛雲閣庭園内にあるものが有名である。
外露地(そとろじ):
露地内の中門の迎え付けをするところを境にして、外側を外露地、内側を内露地という。利休の頃の露地にはこのような区別がなく、分けられるようになったのは後世になってからである。

----------た----------

大徳寺垣(だいとくじがき):
京都大徳寺の境内にあったもので、現在はこの本歌は見られないが、古来用いられていたためにこの名前が起こったものと思われる。建仁寺垣と同様に囲み垣の一種で、竹の小枝を集め、これをよく左右にさばき、張り付け、さらに上から押縁竹で押さえ、シュロ縄で結んだもの。寸法は下から五寸(約15cm)、一尺三寸(約39cm)、六寸(約18cm)一尺三寸とし、その上を五寸くらいの空きとし、冠竹を挿入している。よく茶庭の中門付近や中潜り付近に用いられる。
台目畳(だいめいだたみ):
茶席の畳の名称で、台子の幅と風炉先屏風の厚みの合計を差し引いた畳のことをいう。台子などの棚物を置くことが許されない手前畳の規格。茶室における台目構えというものがあり、台目切炉、中柱、釣り棚からなる手前座の構えをいうのであるが、この部分に使用される畳のことである。因みに三畳台目といえば、通常の畳三枚と台目畳み一枚の意味である。
滝石組(たきいわぐみ):
石で組まれた滝のことで、水を落とすように石を組むが、池泉庭園や枯山水などで、最初から水を落とす意志が無く組まれた枯滝石組も、同様の名称を用いる。またこれとは逆に、元々は水が流れていたものが、現在では涸れてしまっていることから、枯滝石組と称しているものもある。例として京都天竜寺や西芳寺などがそうである。
滝添石(たきぞえいし):
滝石組の一部で、水落石の両脇に組まれている石のこと。
立手水鉢(たちちょうずばち):
立ったまま使用する手水鉢のことで、露地における初期の形態の手水鉢の据え方である。現在でも書院の手前に飾鉢として使われている。
塔頭(たっちゅう):
本来の意は、当時の住職に帰依して、師のために設けた塔所であることから塔頭の名が付いた。現在では本坊を中心として山内にある多くの支院のことをさす。
立石(たていし):
石組の手法の一つで、石を立てて据えることをいう。逆に寝かしてある石のことを伏せ石などという。この立石は、日本庭園の石組手法の中心となるものであり、これらの石の据え方次第によって、その庭に対しての評価が異なってくるぐらい、非常に重要な要因を占めるものである。
多島式(たとうしき):
奈良、平安、鎌倉期ぐらいまでにおいての大規模な池泉庭園に見られる形式で、地中に多くの島を設けている様式の庭園のこと。
玉石敷(たまいしじき):
こぶしほどの大きさの丸い石を敷き詰めて通路などに用いる方法。目地はモルタルや、苔などが使われる。
丹波石(たんばいし):
京都亀岡市付近を中心にして産出する花崗岩で、独特のさびがのることで知られている。同じ京都から産出する鞍馬石とは、同じ花崗岩であっても風合いはかなり違う。延段、飛石、沓脱石、束石などに使用されるが、やはり最近では自然保護の立場から産出する量は激減しているので、非常に高価な石材となっている。

----------ち----------

茶室(ちゃしつ):
茶事を行う座敷のこと。最初は書院に炉を切って、茶を点てることから始まったが、やがて茶の湯の世界に侘寂が流行し始めると、現在の茶の湯の世界で最も憧れの世界である草庵風の茶室が建てられはじめ、現在ではこの空間を一般的に茶室とよぶことが多い。草庵風の茶室の場合、一切の贅を排したもので、そこに躙口などの茶の精神を遺憾なく発揮した意匠を付け加えることによって、精神性と意匠の両面を巧みに融合した建物である。現在では茶室を建てる際、一種の伝統工芸の部類に入っており、そのため坪単価が高騰し、侘び寂の精神を求めるのに多額の出資をしなくてはならない現象が起きている。
茶庭(ちゃにわ):
茶室に付随した庭のことで、別名「露地」ともいう。茶室自体が次第に侘寂の世界に入っていったことから、それまでの書院茶室とは違う、深山幽谷の風情を求めるのが一般的である。
中心石(ちゅうしんせき):
鶴島や亀島などの中心部に置かれる石のこと。蓬莱山としての意味で用いられるのであるが、庭園全体を引き締める効果がある。この場合の石は主に立てて据えることが多い。
手水鉢(ちょうずばち):
茶庭の中で、手を洗ったり口をゆすいだりするための、水を入れておく鉢のこと。自然石のものや、石造品からの見立物、完全な創作物、金属製のもの、陶器などがあるが、石造品のものが最も多く使われている。
塵穴(ちりあな):
茶室に付随した物で、読んで字の如く塵を入れるために設けられた物。丸や四角などが一般的である。茶事の際などはこの穴の中を綺麗にしておき、露地内などに咲いている花などを、目立たぬように入れたりして、そのときに招いた客に対しての心配りを演出する手段としても使われている。茶事の際は青竹で作った箸を入れておく。
塵箸(ちりばし):
塵穴にもたせかけて入れておく青竹の箸で、茶会の時などに入れておく。箸の上部の削りかたは流派によって違う。
地輪(ちりん):
五輪塔の基礎部分。

----------つ----------

築地塀(ついじべい):
土塀の一種で、土や瓦などを混ぜて積み上げた物。様々な工法があり、骨組みとしては、木組みや竹などの構造の物もある。
束石(つかいし):
縁束、床束の下に据える石のことで、上部が平らな自然のものや、加工して平らにしたものなどを使用する。人目に付くようなところでは、景としての使用も考慮される。
築山(つきやま):
庭園内における人工的な山。仮山(かさん)とも称した。また古くは庭園のことを山水と称したことから、自然風景の象徴である山と、水の景を表現するためにこのような山を作ったと考えられる。
築山庭造伝(つきやまていぞうでん):
江戸時代に書かれた庭園書。前編と後編に分かれており、事細かに決めごとが書かれている。しかしながらあまりにも定型化しすぎたために、自由な創作意欲を削ぐことにもなった。
蹲踞(つくばい):
茶席の近くに設けられ、手水鉢や役石などを含めた意匠の総称。手水鉢自体が低く据えられているために、つくばって使うことから蹲踞の名が付いた。逆に手水鉢を高く据えて、立って使う蹲踞形式の物もあり、立ち蹲踞などともいう。
壺(つぼ):
室と室との間の空間にある庭園のことをいう。坪、局、壷、壺の字をあてはめる。現在では「坪」の字をあてはめることが一般的であるが、壺庭としての正しい字の使い方は「壺」になる。
鶴島(つるじま):
蓬莱式庭園の様式の一つで、亀島に対する鶴島の形で、池泉庭園ではもちろんのこと枯山水庭園にも用いる。鶴の表現としては、立石を一個か二個用いることによって、鶴の姿を抽象的に表現している。また松を植えることもある。

----------て----------

亭主石(ていしゅせき):
茶の露地における飛石としての役石の一つで、中門の内側にあり、亭主が迎付の時にこの石まで出てくるのである。
出島(でじま):
池泉庭園に作った半島のことをいう。枯山水の場合は、白川砂に、苔地の出島などで表現する。
手燭石(てしょくいし):
蹲踞の役石の一つで、夜の茶会の際に手燭を置くための石。茶の流派によって左右位置、高さが違う。

----------と----------

道教式(どうきょうしき):
中国に発生した民族的宗教の道教という思想を取り入れた庭園のこと。蓬莱式と同じく、神仙島、鶴亀島などがあり、長寿延年を祝う形式となっている。
洞窟石組(どうくついわぐみ):
日本庭園における蓬莱神仙思想の、神仙の住む洞窟を石組によって表現したもの。名古屋城三の丸庭園、阿波国分寺、普門院庭園などの例がある。
同朋衆(どうほうしゅう):
室町時代の同朋で、官位は低かったが、当時の諸芸術に関しての制作、鑑定等にすばらしい実力を持っていた。善阿弥、調阿弥、芸阿弥、相阿弥などの名前が当時の文献からよく目に付く。義政の東山山荘の庭園計画には善阿弥のことが「蔭涼軒日録」という文献に記されている。能阿弥は義教に仕えその後義政に仕えたのであるが、文学の才があり、絵もよく描いていた。芸阿弥も能阿弥と同じく水墨画に優れた才能を持っていた。相阿弥は能阿弥の孫であり芸阿弥の子。松雪斎と号し、水墨 画に長じていた。相阿弥も作庭技術に傑出したものを持っていたと伝えられているが、相阿弥作庭の伝説は大体に江戸中期以降に起こったものであり、庭園に関してのことは作為的なものであるとみてよいであろう。これらのことから、同朋衆をもってして足利氏の芸術生活を底辺で支えていた、非常に次元の高い存在であったのである。
燈籠(とうろう):
石燈籠を参照せよ。
飛石(とびいし):
人が庭園内を歩く際に便利なように並べた石のこと。飛石を据えることを、飛石を打つともいう。最初は実用面からだけであったが、実用と景の両面のすばらしさから、広く普及した。
留石(とめいし):
園路や飛石などの上に、置く石のことで、握り拳大ぐらいの石にシュロ縄で括った物で、ここより先に行ってはいけませんというしるしとして用いたもの。

----------な----------

流れの石組(ながれのいわぐみ):
実際に水の流れている庭や枯山水に用いられ、水の変化を見せるように配置されている。
名古曽の滝(なこそのたき):
京都大覚寺大沢野池にあった滝の名称。現在では水は涸れており、滝石組のみが残っている。
棗形(なつめがた):
茶道具の棗に似た手水鉢の名称。妙心寺玉鳳院のものは著名である。
波分石(なみわけいし):
池泉庭園において、滝口から池に向かって流れた水を、流れの中に石を配置することによって、流れを分けたりする石のことをいう。
奈良石(ならいし):
奈良市近郊から産出していたもので、黒御影とよばれる黒色の花崗岩で、燈籠や手水鉢の石材として使われていた。残念ながら現在では産出していない。

-----------に----------

躙口(にじりぐち):
茶席の客の出入り口の一つで、利休居士が舟付に漁夫たちが躙口から出入りするのを見て考案したものと伝えられている。方形で60cm角ぐらいの狭い出入り口で、どの様な客もこの入り口から出入りする。
二段石(にだんいし):
刀掛石を参照せよ。
二番石(にばんいし):
茶の露地における躙口付近の役石の一つで、躙口の際にある踏み石が一番石といい、それに続く二番目の石ということで、二番石の名が付けられている。
二連打(にれんだ):
二つの真っ直ぐ打った石を左右に振り分けたりする飛石の打ち方のことで、変化に富み、景としても、また歩いてみても非常におもしろい打ち方である。しかしあまりやりすぎるとかえってしつこくなってしまうので、兼ね合いが必要である。
庭奉行(にわぶぎょう):
室町幕府の職名で、幕府庭中の修繕や掃除などを司っていた奉行のこと。

----------ぬ----------

布落ち(ぬのおち):
池庭に水の落ちている滝のその水の落ち方が、ちょうど布のような姿の場合をいう。
沼津垣(ぬまずがき):
細竹を網代状に組んだ竹垣で、静岡県沼津地方で作られたことによってこの名称がついた。

----------ね----------

根石(ねいし):
建築の柱の礎石として用いられる石。

----------の----------

能阿弥(のうあみ):
同朋衆を参照せよ。
覗石(のぞきいし):
鉢前や塵穴に用いる石のことで、鉢前のものは立石で使用し、塵穴の場合は塵穴の端にかけて組み込まれ、そこに塵箸をもたせかけるのである。
軒打(のきうち):
建物の軒内の差石などから雨落ち際までで、石を引いたりタタキなどで固めた物を軒内という。
野筋(のすじ):
庭園内の築山の一種で、築山に続く低い山のことで、あまり石組などは用いない。
野面積(のづらづみ):
石垣における工法の一種で、自然石の表面を見せる積かた。
延段(のべだん):
路地における園路の舗装方法のことで、切石敷き、寄せ石敷き、玉石敷きなど、様々な方法があり、またその石などの敷き方によって、真、行、草とわけて「これは真の延段」などの言い方もする。
乗石(のりいし):
茶室の躙口の三番目の石で、先客が踏み石の上から入席するときに、次客はここで待つ。また別名三番石ともいう。砂雪隠の中に置かれている二個の石も乗石という。
乗越石(のりこえいし):
中潜りの役石の一つで、亭主石と客人石との間にある石で、乗り越え石を中央に挟んで挨拶を交わす。

----------は----------

拝石(はいせき):
主護石の前に据える大きな平天の石のこと。この石を使って礼拝していたことから、礼拝石、神拝石ともいわれている。
橋石組(はしいわぐみ):
平安期の庭園に用いられた物が絵巻物などに残っており、これが最も古い橋石組の形態なのであろうが、現存しているものはない。石橋として現存する最古の物は、京都天竜寺に架かるものが最も古い。形態としては三橋式のものが多く、主として二橋は直線的に架けられ、一橋だけ折るようにして架けている例が多い。また一橋のみの場合もあり、例としては京都大徳寺大仙院の橋が、一橋のものの中では特に優れた意匠である。
橋杭形(はしくいがた):
橋脚を利用した手水鉢や燈籠のこと。実際に橋脚で使われていたものもあるが、それに似せて作られたもののほうが多い。
橋添石(はしぞえいし):
庭園内に石橋を架けた際に、その両岸の袂のところに立てられる石のこと。室町時代では低い石が一石か二石であるが、桃山期になるとやや高い立石が三石用いられるようになる例がが多い。江戸初期になるとそのうちの一石が特に高く据えられる。
橋鋏石(はしばさみいし):
橋添石を参照せよ。
八陣の庭(はちじんのにわ):
中国古代の兵法のことで、八様の陣構えのことをいう。一説では諸葛孔明の八陣の構えからきているともいわれている。京都二条城二の丸庭園がこの考えによって作られているといわれているが根拠はない。最初からこの八陣の法をテーマとして作られた庭園としては、重森三玲作の岸和田城の「八陣の庭」がある。
羽根石(はねいし):
蓬莱思想の庭園における鶴島石組の中の、鶴の羽根を象徴した石のこと。
鉢前(はちまえ):
書院座敷の縁側に設置された、縁先手水鉢と周りの役石など一体を含めて鉢前という。
羽根石(はねいし):
鶴島や鶴石組における、鶴の羽を象徴する石のことをいう。
浜の敷石(はまのしきいし):
京都仙洞御所などにある、池の岸辺に敷き詰められた丸い石敷きのことをいう。

----------ひ----------

檜垣形(ひがきがた):
京都円徳院にある手水鉢が本歌で、宝塔の笠を立ててその上部を凹形に切り込んでそこに水穴を設けたもので、非常に特殊な使い方であり、またこのように仕立て上げた才覚にすばらしいものがある。
尾崎石(びさきいし):
蓬莱思想の庭園における亀島石組の尾にあたる部分の石のこと。
神籬(ひもろぎ):
神様が降臨すると信じられていた高山や高木、森などは信仰の対象となっていたが、それを手近にしたものが神籬である。通常常緑樹が用いられる。
屏風石(びょうぶいし):
瀧から落ちて池へ流れてくる磯際に、屏風を立てたかの様な石のこと。役石の一つ。
平等院形(びょうどういんがた):
平等院鳳凰堂の前に立てられている燈籠で、基壇と基礎が平安時代のもので、他は鎌倉時代の後補。
平庭式(ひらにわしき):
庭園の一様式で、池も築山もなく、平坦な庭園のことをいう。例としては京都龍安寺の庭園など。

----------ふ----------

風致地区(ふうちちく):
都市計画における自然、地形、建物などの規制をしている指定地域のことで、史跡名勝地、景勝地、自然美の多い土地などが指定される。
深草土(ふかくさつち):
京都伏見の深草にある土のこと。この土を使って軒内のタタキなどに使用された。近年良質の土が採取できなくなってきており、貴重な材料になっている。
武学流(ぶがくりゅう):
青森県を中心にして大石武学が京風の作庭方法を伝え確立したもの。南津軽郡にある清藤家の盛美園は武学流庭園の中でも傑出している。
藤戸石(ふじといし):
京都醍醐寺三宝院の庭園内にある石のことで、岡山県産の名石。備前の国から東山殿、細川氏綱邸、織田信長が足利義昭のために寄進し、さらに豊臣秀吉が聚楽第に運び入れた後、三宝院に寄進した。このような経緯から藤戸石が名石とよばれるようになった。
仏磐石(ぶつばんせき):
大徳寺大仙院の中にある石の一つで、このような名称が付けられている。
筆架石(ふでかけいし):
昔の石組の役石の一つで、池泉の水際に立つ石のことをこのように呼ぶ。
不動石(ふどうせき):
石組の中で最も重要な石の名称。守護石。
舟形石(ふながたいし):
舟の形をした石のことで、池泉、枯山水の両方の様式で使われる。蓬莱思想の庭園意匠で使われ、この舟を宝船と想定して、蓬莱山へ宝を取りに行く状態のものを出舟といい、この状態は空荷であるためにあまり低く石を据えないのが特徴である。また宝を積んで帰ってきた舟を入り舟と称し、荷がどっさり積まれているために低く据えられており、両方の形式をよく観察してみると、各々の特長がよく出ている。
踏石(ふみいし):
躙口の際にある石のこと。別名一番石。
踏分石(ふみわけいし):
飛石の一つで、二股にわかれるところに置かれた飛石をこのように称し、普通の飛石よりも少し大きめのものを使用する。

----------へ----------

扁額(へんがく):
寺院の方丈や茶席などに掛けられた木製の額のことで、室内、軒下などで、席名や室名が書かれている。
べんがら
顔料の一種で、漆喰やセメントに混ぜて使用する。

----------ほ----------

宝篋印塔(ほうきょういんとう):
五輪塔と並んで石塔の二代主流のうちの一塔。名前の由来は『宝篋印心咒経』を納めるところからきている。平面は相輪を除いて各部が四角であり、上から、相輪、笠、塔身、基礎、基壇の各部からなる。笠の部分は数段の段形と四隅に隅飾りがあり、塔身は月輪内に梵字を彫る。基礎には反花が彫られ、格狭間も彫られている。時代によって各部のディテールが異なってくるが、時代が下がるにつれて隅飾りが開いていく。
方丈(ほうじょう):
禅宗において、住職が座禅したり居住する建物のこと。客殿、本堂、仏殿なども後に方丈といわれるようになり、また住職のことも指す。
宝塔(ほうとう):
石造品の一種で、密教系の塔として作られた。上から相輪、笠、塔身、基礎の各構成からなるが、相輪の代わりに宝珠になったりするものもある。宝篋印塔や、各石造品にもあてはまることであるが、やはり時代の古い物ほど美しいプロポーションであり、特に鎌倉時代に作られたものが、例外なく美しい姿をしている。
蓬莱島(ほうらいじま):
神仙島とも称し、、中国の道教思想から起こったもので、東海中に仙人の住む不老不死の霊山のこと。庭園内の池を海として、そこに作った島を蓬莱山と見立てたことから、蓬莱島と称している。この池の中に別の島、方丈(ほうじょう)、瀛洲(えいしゅう)、壷梁(こりょう)の三島を設置して、四神島と称する。
北宋画式(ほくそうがしき):
南宋画に対する北宋画で、筆勢の鋭い画風である。この北宋画が庭園に与えた影響は大きく、北宋画式の庭園ともいい、雪舟の庭や、京都大徳寺大仙院の庭などそうである。
蛍形(ほたるがた):
生けこみ形の燈籠で、桂離宮にある形がよく知られている。
本阿弥光悦(ほんあみこうえつ):
江戸初期に活躍した芸術家で、刀剣、書道、陶芸、茶道などに秀でた才能あふれる人物であった。加賀の前田家に仕えた後、家康から京都鷹が峰の土地を譲り受け、一族とともにそこに住んだ。
梵字(ぼんじ):
梵語を記すための文字で、インド古代の言語。梵字も年代などによって違いがあるが、日本に伝わったものは「悉曇(しったん)」といわれるものである。仏教教典などに使われており、それらの関係から供養塔などの石造品に彫られている。石造品にある梵字の場合、金剛界や胎蔵界などを表し、その文字によって方角などが定められているのであるが、このことを知らずにでたらめに置かれていることが多々ある。
本御影(ほんみかげ):
神戸市東部から産出した花崗岩で、花崗岩をまとめて御影石という名称を作り出した本家本元である。非常に良質な石材で、燈籠や、手水鉢の加工に使われた。

----------ま----------

前石(まえいし):
蹲踞の前にある石で、客が手水を使うために乗る石のこと。蹲踞の役石の一つ。
真黒(まぐろ):
京都賀茂川の川床から産出する黒色で硬質な石。黒く表面に虫がはったようなものが特に珍重される。大きなものは庭園の景石として、また表面の平らなものは茶室の貴人口などの貴人石に、また小さいものは延段に使ったり玄関などに敷きつめたりと、あらゆる場所で好んで使われた。近年は採取禁止になっており、新規では産出できない。
待合(まちあい):
茶の露地の中にあって、腰掛け待合いともいう。茶事の際、亭主からの迎付けがあるまで、待っているところ。この部分にも正客以下の役石がある。

----------み----------

御影石(みかげいし):
本御影を参照せよ。
水穴(みずあな):
手水鉢に水を満たすための穴。自然にあいているものもあるが、大抵が人工的にあけたもの。
水落石(みずおちいし):
滝石組の一種で、中央の水の落ちる石で、板石状の物などを使う。枯滝の場合などにも据えられる。
水分石(みずわけいし):
滝石組の一種で、滝壺付近に据えられ、水を左右に分けるための石。枯山水の枯滝石組などにも用いる。
都林泉名所図会(みやこりんせんめいしょずえ) :
秋里籠島の著。京都の寺院などの庭園142図の絵と解説を、全5巻で寛政11年(1799)に描いており、その当時の庭園の形態がわかる有用な資料である。

----------む----------

迎付(むかえつけ) :
茶会の時に亭主が、招待した客を中門の手前で迎えること。招待された客が待合いに揃った時点で、亭主の合図により客は正客を先頭に待合いを出て中門に向かう。亭主は頃合いを見計らって中門に赴き、門を開いて亭主石の上に立つ。そして客は中門の外で亭主と無言の一礼をして挨拶を交わすのである。
夢想国師(むそうこくし):
鎌倉から室町時代にかけての臨済宗の僧。各地の寺を開基し、自ら作庭にも携わった。
無縫塔(むほうとう):
墓塔で、古くは禅宗の開山級の人達の墓として用いられた。近世では宗派を問わず僧侶の墓として用いられている。

----------め----------

目地(めじ):
敷石などの石と石との接合部分のことをいう。この目地の仕上げ方次第で、その敷石がより力強く綺麗に見えたり、またその逆にもなるので、最後の仕上げの部分としては、非常に重要なところである。
面取(めんとり):
建物の、四角い柱の角を取ることをいい、この面の取り方によって、その建物の大凡の時代判別になる。古い時代の物ほど面の取り方が大きい。また建物だけではなく、石造品などの四角い柱状の物にも面取りされていることが多い。

----------も----------

物見石(ものみいし):
茶の露地における役石の一つで、茶室の額などを見るために設けられた飛石で、この石だけ独立して、額などが一番見やすいところに一歩分外に打ってある。

----------や----------

役石(やくいし):
茶の露地における、それぞれに役目を持った石のことで、躙口、待合、手水鉢付近など露地のいたるところにこのような石がある。
役木(やくぼく):
庭園内の各々の役目を果たす樹木の総称。江戸時代に提唱され、それが今日まで続いているが、意味不明のものもある。
薬研彫(やげんぼり):
鎌倉、室町期の石造品に見られる彫り方の呼称で、文字をVの字形に深く彫る彫り方。この彫り方だけでも、その石造品の大凡の時代判別にもなる。
八つ橋(やつはし) :
昔八枚の板を使って架けた橋のこと。水面近くで欄干はなく、適当に屈曲させたもの。
遣水(やりみず):
奈良、平安期の頃の庭園などで、優雅な曲線を描きながら流れる水のことをいう。枯山水の発達と共に作られなくなった。

----------ゆ----------

雪見燈籠(ゆきみどうろう) :
竿の代わりに三脚や四脚の足で、中台以上を六角か八角にし、かつ背の低い火袋で意匠されている。桂離宮のものと、泉湧寺のものが姿も美しくバランスの取れた意匠である。
遊魚石(ゆぎょせき):
滝の下に魚が遊泳しているような姿の石のことをいう。
湯桶石(ゆとうせき):
蹲踞の役石の一つで、冬の茶事の際に、湯の入った桶を置く石のことをいう。
柚木形(ゆのきがた) :
現在、春日大社の宝物館に保存されている平安時代の燈籠。元は若宮社の南の柚の木の下にあったことからこの名称がついた。中台以上が八角で、基礎は六角である。全体の姿は非常に近世が取れており、また時代の古い物だけに反花や格狭間の彫りに力強いものがある。

----------よ----------

影向石(ようごうせき) :
庭園内の中島のことを影向島といい、そこに据えられた石のことを影向石という。またこの影向島に架けられた橋のことを影向橋という。影向とはそもそも神仏の来臨のこと。
寄石敷き(よせいしじき) :
庭園内の敷き石の一種で、大小さまざまなかたちの石を敷く石敷きのこと。
寄燈籠(よせどうろう) :
最か燈様々な石造品を集めて組んだ燈籠のこと。有名なものとしては、大徳寺孤蓬庵忘筌の露結の手水鉢に対して据えてあるものや、岡山県高梁の頼久寺にある寄燈籠は有名である。
四つ目垣(よつめがき):
竹垣の一種で、細い青竹を縦横に組み、それらの物をシュロ縄で結び止めた物。最も手軽で効果的な竹垣で、茶の露地、一般庭園の境界や仕切など、幅広く使われている。
夜泊石(よどまりいし):
池泉庭園において、数個の石を直線に配置した石組のこと。蓬莱思想などからきた物で、神仙島である蓬莱島には、仙薬財宝があるために、それらの物を求めるために、夜、海に停泊している舟の姿を現している。京都西芳寺、鹿苑寺(通称金閣寺)、積翠園などの夜泊石が有名である。

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礼拝石(らいはいせき):
庭園の中央に配置された平石で、そこで礼拝したり、またその石に立ってそこの庭園全体をまず最初に見渡すときなどに使う。

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鯉魚石(りぎょせき):
庭園の滝石組に用いられる手法の一つで、龍門瀑を登る鯉を象徴した石のこと。金閣寺の滝石組がその好例。
竜門瀑(りゅうもんばく):
庭園の滝石組に用いられる手法の一つ。中国黄河の上流にある滝を竜門瀑といい、これを模したものを庭園内の滝石組に用いた。また中国の伝説による三級岩と呼ばれる三段の滝を、下流から上ってきた鯉が登ろうとするが、なかなか登れない。その不可能な滝を、もし万が一登ることが出来れば竜と化し昇天する。この伝説を竜門瀑と共に様式化し、竜門の滝とも称せられる。滝口の上部や下部に鯉魚石を設けるなどして組まれている。
林泉(りんせん):
庭園のこと。非常に古い呼称の一つで、「日本書紀」に庭園の意味とは多少異なるが使われている。平安期の文献などには実際に庭園のことについての記述で使われている。

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瑠璃池(るりち) :
寺院の庭の池泉に付けられた名称のこと。

----------れ----------

蓮弁(れんべん) :
蓮の花弁のこと。これを図案化して燈籠の中台や基礎などに彫られている。また仏像や他の石造品の台座などにも用いられている。
蓮華文瓦(れんげもんかわら):
軒瓦の一種で、飛鳥から奈良時代の古社寺に見られる。

----------ろ----------

露地(ろじ):
茶庭のことで、茶室が本格的に成立した頃、往来に専門の庭が必要になってきたことから、通り道としての意味合いがあり、利休以前の茶庭の場合には路地または路次の字が使われた。侘寂の見地から深山幽谷の景を手本としたために、多くの植裁が用いられた。
露地門(ろじもん):
露地の入口にある門のこと。屋根材によって呼び方が異なっている。藁葺き門、瓦葺き門、竹葺き門、柿葺き門、檜皮葺き門など。

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脇仏石(わきぶついし):
三尊石組の左右にある石のことで、略して脇石ともいう。
渡廊(わたろう):
渡り廊下のこと。建物と建物を結ぶ廊下のことで、現在では渡廊下という。
侘び(わび):
茶道における精神的な理念を表す言葉で、表面的に派手なもの、にぎやかなものを否定し、静まり返ったものを求めること。そして内面の洗練された枯淡さや力強さを表すことを良しとする。
蕨手(わらびて):
六角形や八角形の石燈籠の笠の端の部分に巻いているものをいう。蕨の先端に似ていることから、この名前が付けられている。この蕨手の形によっても時代的な違いがあり、先端の直線のものほど古い。


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